TOP > 不倫の法律
![]() |
不倫相手への謝罪や慰謝料請求の可否、関係清算と再発防止のための接触禁止の誓約や必要な対処の要求、など、不倫問題にかかわる、法律上の基礎的な知識や注意点などを、不要なトラブルや事件に発展しないよう、条文や判例などを付して解説します。 |
不倫(ふりん)という言葉は、本来は「倫理から外れたこと」を意味する用語でしたが、最近では、人の道に背いた男女関係、すなわち、既婚者が配偶者以外の異性と恋愛し、肉体関係を持つことを指して用いられています。
「婚外恋愛」や「略奪愛」、「火遊び」、などという表現をすることもあります。
法律用語としては「不貞な行為」といいます。
民法の条文においては「不貞な行為」について、何等の定義もされておりません。
唯一、裁判上の離婚事由として、民法第770条1号に記載されているのみです。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
最高裁判所の判例によると、「不貞行為」とは、「配偶者以外の者と自由な意思に基づいて肉体関係を結ぶこと」であると定義されています。
【要旨】
「不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない」
プラトニックな恋愛関係は、日常用語としての「浮気」に該当するかも知れませんが、法律上の「不貞行為」にはなりません。
配偶者のいる者が、他の異性と強引に性的な関係を結んだ場合、いわゆる「レイプ」なども「不貞行為」となります。
ただし、強引に性的な関係を結ばされた相手は「不貞行為」とはなりません。
夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った相手方も、不法行為責任を負います。
【要旨】
「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。」
ダブル不倫(W不倫)とは、一般に、既婚者同士が不倫することをいいます。
不倫している当事者のうち、男性には妻が、そして女性には夫が、ということになる訳です。
つまり、不倫当事者双方ともが、自分の妻又は夫に内緒で交際をしているという関係であり、加害者と被害者が2人ずついる、ということです。
大半の場合、いずれか一方の配偶者が、不倫の事実を知り、関係の清算や慰謝料の支払を求める、という事案になります。
不倫の慰謝料請求を考えられている方の場合、選択肢は2つあります。
もしも双方の配偶者に知られている場合、請求する人と請求される人が異なる2つの事件、となるのですから、法律上、合意があっても、相殺することは出来ません。
ただし、4者間で条件が折り合うのでしたら、事実上の相殺をしたのと同じような結果になるように、4者間での合意書を作成して終結させることも可能です。
不倫の慰謝料金額は、裁判の場合には、不倫によって夫婦関係が破綻し離婚に至った、という場合の方が、離婚に至らなかった場合に比べ、高額となる傾向にあります。
ダブル不倫の場合、通常の恋愛や不倫とは違い、関係がズルズルと長続きする場合が多いという特徴があります。その大きな理由は、以下の3つであると言われています。
(1) | 会える時間が少なく場所も限られている |
W不倫の場合、お互いに家庭があるため、普通の恋愛や不倫に比べて、会える時間が少なく、逢える場所も限定的になります。 そのため、比較的、自分のいいところだけを見せて悪いところを見せなくて済みますし、相手の良い部分だけを見て、嫌な部分を見ないで済みます。 そして、逢える時間が限られている分だけ、一緒にいる時間が貴重に感じられますし、生活感を意識することも無く、新鮮な気持ちでいられる、ということです。 | |
(2) | 対等な立場である |
通常の不倫の場合、どちらか一方のみが独身であるため、土日や記念日に一緒に過ごせないなどの寂しさや孤独を、独身者の方だけが負う形となり、不満が募り易くなります。 当然、相手の家庭を壊して略奪愛を図ろうと考えることも珍しくはありません。 しかし、W不倫の場合は双方ともに家庭があり、守るものと失うものを背負っています。 そのため、周囲に自らの不倫がバレないよう、とても慎重になります。 そして、その緊張感やドキドキ感というものが、相手に対するトキメキ感に転換される、ということです。 | |
(3) | 結婚というステップが無い |
ダブル不倫の場合には、通常の恋愛と違い、すでに双方ともが結婚して家庭を持っていますので、ある意味、始めから結婚を考えていないことが多い「気楽な関係」です。 結婚を考える場合には、経済的な問題、子どものこと、双方の両親や老後のこと、など、現実的に考えないといけない問題が生じてきます。 また、お互いに、すでに築き上げた家族や財産、場合によっては社会的地位があり、そもそも、双方の配偶者が離婚に応じない限り、実現が不可能なのですから、「結婚」というものに対するハードルが極めて高くなります。 |
慰謝料の金額は、実際には、法律で決められている訳ではありませんし、明快な基準や正確な公式も存在しません。
裁判外の示談(和解)の場合、当事者双方が合意するのであれば、金額は原則として自由に取り決めることが可能です。
ただし、支払う側に納得して貰うためには、裁判例などの合理的な根拠を示した方が良いのは確かですし、あまりに過大な金額を要求してしまうと「恐喝」等と反論される危険がありますので、注意は必要です。
一般的には、示談の場合の方が、裁判で争った場合よりも高額になる傾向があります。
ただし、当事者間で合意・示談に至らない場合は、最終的には、裁判によって、事案ごとに、様々な要素が勘案されて、裁判官に判断されます。
裁判例の相場としては、全体の90%位が300万円以内で収まっており、残り10%のうち、5%が500万円以内、となっております。
また、不倫を原因として離婚に至った場合の方が高額となる傾向にあります。
裁判となった場合、慰謝料金額の算定にあたっては、様々な事情の一切が考慮されて総合的に判断されることになりますので、すべてを列挙することは不可能ですが、主要な「取り上げられる要素」としては、以下のとおりです。